味覚異常[2] <恵比寿・歯科>
前回に引き続き味覚異常についてです。今回は検査と治療について。前回同様、日本歯科医師会雑誌Vol.63 No.4に掲載された東京歯科大学教授の田崎雅和先生の論文から、東京歯科大学千葉病院外来にて行われている味覚検査、そして治療について紹介させていただきます。
①問診、視診、血液検査、レントゲン検査:局所的な点では<1>不適合充填物の有無<2>舌苔の有無<3>神経損傷の有無<4>鼻疾患の有無<5>胃炎の有無<6>上顎洞炎の有無、全身的な点では<1>唾液分泌障害の有無<2>貧血の有無<3>生体内微量元素の測定<4>心因性の有無<5>脳血管障害の有無<6>投薬の有無、またその薬剤名の把握などが挙げられる。
②唾液分泌量の測定:3分間無味のガムを噛んで1ml/1分以上の分泌量を基準値としている。
③ソルセイブ検査:6段階の濃度で塩味が塗布された濾紙を順番に口に含み、認識できるか調べる。
④電気味覚検査:口腔粘膜6ヶ所に直接電気刺激することにより、釘をなめたときの酸味のある嫌な味を検査する。基準値以下の電気刺激できれば正常。
⑤濾紙ディスク検査:4基本味を各5濃度、3濃度までに味質を認知できれば基準範囲内。
⑥血液検査:一般血液検査(舌炎などに関連する貧血など、血清鉄の要素)、血清亜鉛値、銅値の測定
次に治療ですが、上記⑥で亜鉛値を調べていますが、これは亜鉛欠乏と味覚障害が関連しているからです。亜鉛は味細胞のDNA、核酸、タンパク質の合成に関与しており、亜鉛の不足は味細胞のターンオーバー(新生)の延長や味物質に対する感受性の低下を誘発します。したがって亜鉛欠乏性味覚障害と特発性味覚障害(血清亜鉛値は基準範囲内であり、他の臨床検査からも味覚障害の原因や誘因が特定できない症例)に、亜鉛製剤の服用はきわめて有用であると言われています。本来亜鉛は食物から摂取しなければならず、一日平均摂取量は大人で15mg、子供で5mg、妊婦では20mgが必要ですが、日本人の平均的な食事からは約9mg、本来摂取する量の3分の2しか摂取できていません。若い日本人女性では半分以下の6.5mgしか摂取できていないとも言われています。また亜鉛の欠乏には全身疾患も関与します。腎不全では腎機能不全のため尿中にタンパク質が排出され、そのとき亜鉛の排出も促進されます。さらに食事治療ではタンパク質の摂取制限もあり、結果として体内亜鉛量が減少します。肝障害では、急性肝炎、慢性肝炎ともに尿中への亜鉛排出量が増加し、さらに消化管での亜鉛吸収能の低下が起こり、血清亜鉛値の低下が生じます。糖尿病では重症度に比例して尿中への亜鉛排出量が増加し、血清亜鉛値の低下が生じます。内科や耳鼻咽喉科では、亜鉛含有胃潰瘍治療薬であるポラプレジング(商品名プロマック顆粒15%、プロマックD錠75)を味覚障害患者に処方しています。しかし歯科では「味覚障害」という診断名でポラプレジングを健康保険処方できません。そこで東京歯科大学教授の田崎雅和先生は、栄養補助食品として発売されている亜鉛製剤を服用してもらっているとのことです。市販されている亜鉛の栄養保持食品は、小林製薬、ファンケル、アサヒ、DHCなど、論文に紹介されているものだけで6種類もありました。これらから食事摂取だけでは足りていない分補充します。食事から半分しか摂取できていないとして1日7.5mg服用するなどです。論文には服用の注意として、1日摂取量が多過ぎないことと最低3ヶ月と長期間服用することが記されていました。
また味覚障害を起こしやすい薬剤が存在します。基礎疾患によりそれらの投薬を受けている場合は、薬剤の変更を促します。さらに薬剤に関して、口渇を起こしやすい薬剤が存在します。唾液分泌量の減少は味覚の感受性に影響を与えます。味物質は、唾液など水溶液に溶解しなければ味覚が生じないからです。したがって口渇を誘発する薬剤が投薬されていれば、その変更も検討します。また漢方や唾液腺のマッサージなどで唾液分泌を促す方法もあります。
今回は検査と治療についてご紹介いたしましたが、これだけのことが病院でできるのです。一人で悩んでいたり、家族に話しても分かってもらえなかったりしている方は、ぜひ一度受診されてみてはいかがでしょうか。